北茨城市民病院 病院長 植草 義史
新病院に移転してから半年が経ちました。おかげさまで多くの市民の皆様にご利用いただける様になってきました。しかし、多くの方に来ていただけているという事は同時に、待ち時間も長くなりご迷惑をおかけしているという事でもあります。この問題について皆様に考えていただきたい事があります。
高齢化が進み病人が多くなった今日、また、医学が進歩して様々な病気が解明されてきた今日、医療はどの様に提供されるべきなのでしょうか?多くの専門医を抱えた大病院を受診した方が早く治療出来るのでしょうか。「何故だか解らないが大病院の方がよさそう」という意識が大病院志向という流れを作り、専門外の問題には一切関与しない医師に身を任せる事になっているのが現状です。
その結果、病院に通院していたにもかかわらずその他の疾患が進行して重症になってから発見されるという、患者さんにとっても担当医にとっても不幸な事が起こる事となります。厚労省の方針としては二次医療圏内で全ての疾病に対応できるようにする、という病院群で医療をおこなっていくべきとする施策をとっています。病病連携・病診連携を強化して必要に応じて高度な病院に紹介していくというシステムです。そのおおもととなるのが「かかりつけ医」です。全ての健康問題をかかりつけ医に相談し、必要に応じて高次の医療機関に紹介していただき、診断がついて診療方針が決まれば再びかかりつけ医に逆紹介していただく。それが、もっとも効率的かつ迅速な疾患に対する対応なのです。
「かかりつけ医」は患者さんのあらゆる問題についてお話を聴き、一般的な検査や治療を行い、必要に応じて病院や専門医に紹介をしてくれる「家庭医」でもあります。患者さんの病歴のみではなく既往歴や家族背景、性格までも知っていて、最適な診療方針を患者さんと一緒に創り上げていくのが「かかりつけ医」です。現在、当院でも「かかりつけ医」として診療させていただいてはおりますが、これはあくまでも一時的なものでしかありません。病院の医師は短期間で交代となります。患者さんと共に歳をとっていく「かかりつけ医」には到底なれません。ご自分の住所の近くに「かかりつけ医」を持つようにして下さい。
「かかりつけ医」は患者さん自身がご自分で創り上げていくものです。何があっても先ずかかりつけ医に相談する様にすれば医師としても全力を上げて問題解決に奔走する様になっていきます。繰り返し受診するうちにその医師があなたの事を一番理解している「かかりつけ医」になるのです。