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循環器内科科長  山尾 秀二

 歩き始めてしばらくすると足が痛くなり、休むと痛みがとれてまた歩けるようになる。それは動脈硬化が原因かもしれません。

 動脈硬化が原因で足の血流障害をきたすものを末梢動脈疾患(PAD)と言います。高血圧・糖尿病・高脂血症・喫煙など動脈硬化の危険因子を持っている人がかかりやすいとされ、食生活の欧米化により最近増加傾向にある病気です。

 初期症状は下肢の冷感やしびれです。進行すると、前記のように、ある程度の距離を歩くとふくらはぎや太ももが重くなったり痛んだりして歩けなくなり、ひと休みすると再び歩けるようになります(間歇性跛行)。更に進行すると安静時にも痛みが生じ、靴ずれなどの怪我をきっかけに足に潰瘍ができ壊死してしまいます(重症虚血肢)。この病気は、5年の経過で約1割が重症虚血肢となるものの、足の切断にまで至るのは僅か数%で、予後は比較的良いようにみえます。しかし、下肢ばかりでなく全身の動脈硬化が進んでいることも多く、5年間で約3割が心臓や脳の血管疾患が原因で死に至ると言われていますから、軽くみるのは禁物です。

 この病気が疑われた場合、まずは四肢の血圧を同時に測定するABI検査で、下肢の血流低下を確認することができます。また、血管造影CTやMRIで血管狭窄の程度を評価することができます。

 治療は、薬物治療、血管内治療、手術などがあります。薬物療法は血液をサラサラにする抗血小板薬や、血管拡張薬などを使用します。血管内治療は、カテーテルを通じてバルーンやステントを用い狭窄した血管を拡張します。手術は人工血管を用いて新しい血液の道(バイパス)を作成します。病状によって最適な治療法を選択することになります。

 この病気には日頃からの生活管理が重要です。禁煙は極めて重要で、加えて適度な運動とバランスの良い食事を心がけましょう。