北茨城市民病院 内科 鈴木 李理
肺炎は、日本人の死因の中で、がんや心筋梗塞に次いで多い病気です。そして高齢者の肺炎のうち、7割以上が誤嚥性肺炎と言われています。今回はそんな誤嚥性肺炎のお話です。
誤嚥とは、飲食物や唾液が誤って気管に入ってしまうことを言います。加齢や病気により飲み込む力が落ちている人は、日常的に誤嚥を繰り返し、流れ込んだ細菌が肺で増えると肺炎を起こします。肺炎を起こすかどうかは、その人の口内環境や体力・免疫力にも左右されます。
誤嚥性肺炎予防の対策その1は「口内環境をきれいにすること」です。正しい口腔ケアにより口の中の細菌数が減ると、肺炎になりにくいことがわかっています。ぜひかかりつけの歯医者さんをつくり、定期的なチェックを受けることをおすすめします。対策その2は「正しい姿勢で食べること」です。食事の時は、椅子に深く腰掛けて背は90度の姿勢で、正面を向き顎を軽く引いて飲み込みます。顎が上がると、喉の構造上、食物が気管に流れ込みやすくなるためです。ただし円背の方は、椅子に深く座ると顎が上を向いてしまいやすいので、クッションを背中に入れてやや浅めに座るようにします。他にも、飲み込む力に合った食事の形を選ぶことや、適度な運動で体力を維持することも肺炎予防に役立ちます。急に飲み込みが悪くなった時は、新たな病気が隠れていることがあります。心配な時はぜひかかりつけの医療機関でご相談ください。