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北茨城市民病院 外科 山﨑 浩宣

 

 鼠径(そけい)ヘルニアという病気は、聞き慣れないかもしれませんが、いわゆる「脱腸」のことです。日本では年間15万件以上手術が行われています。患者さんの8~9割は男性ですが、妊娠などがきっかけとなり鼠径ヘルニアになる女性もいます。
 「鼠径(そけい)」とは太ももの付け根部分のことを言い、「ヘルニア」は体の壁の構造に異常が起き、中に収まっているものが脱出してくる状態を表現する言葉です。内臓をお腹の中に収める壁「筋膜」の力が弱まり、腸がはみ出して「脱腸」した状態のため、表面的には太ももの付け根部分にやわらかいピンポン球大の「しこり」や「こぶ」ができたような形になります。飛び出した臓器は小腸、大腸、卵巣であることが多く、ヘルニア門が大きくなれば腸管が出たり入ったりするようになります。
 以下の症状がある場合、鼠径ヘルニアの可能性が考えられます。
・太ももの付け根に腫れ・できもの・しこりがある
・太ももの付け根に痛みがある
・立ち続けていると痛みが強くなる
・立ち上がったり、お腹に力を込めたりした際につっぱる感じがする
・陰嚢に腫れがある
 脱出した腸が出っ張ったまま硬くなり、本来あるべきお腹の中に引っ込まなくなってしまうことがあります。この状態を「嵌頓(かんとん)」といい、緊急手術が必要となることもあります。治療が遅れると腸が締めつけられ腐ってしまうこともあり、大変危険です。
 鼠径ヘルニアの根本的な解決方法は、手術以外はありません。放っておくと日常生活での不便さや不快感は続きます。当院では従来から行われている足の付け根を切って、メッシュという布でヘルニアが出ているところ覆う手術を行っています。