北茨城市民病院 内科科長 藤枝 毅
大腸癌の発生率は増加傾向にあり、男性は約11人に1人、女性は14人に1人が、人生のうちに大腸癌と診断されています。死亡数でも胃癌を抜いて第2位になりました。動物性脂肪の摂り過ぎや食物繊維の不足などの影響ではないかと言われております。
大腸癌は、早期に発見すれば高い確率で完全に治すこと(治癒)ができます。しかし、早期のうちは自覚症状がないことが多く、自覚症状が現れた時にはすでに進行している可能性があります。だからこそ、年に一度大腸癌検診を受け、早い段階で大腸癌を発見し、適切な治療を受けることが大切です。大腸癌検診を受けることで、大腸癌によって死亡する確率を約60~80%減らせるという調査結果が報告されています。大腸癌になる人が増えはじめる40歳を過ぎたら、大腸癌検診を年に一度受けることを厚生労働省は勧めています。
大腸癌検診は便潜血検査を行います。便潜血検査では、便に混じったわずかな血液の有無を調べます。検査方法は、通常2日に分けて便をこすりとり、容器に入れて検査機関へ提出します。便潜血陽性(便に血液が混じっている)となった場合は、医療機関を受診し精密検査として大腸内視鏡検査を受けることになります。
しかし、検診にも欠点があり、大腸癌ではないのに「大腸癌かもしれない」と言われること(偽陽性)や、大腸癌を見逃す(偽陰性)可能性もあります。そのため、腹痛、嘔吐、体重減少、便が細い、目で見える血便があるなどの自覚症状がありましたら、まず医療機関受診をお勧めいたします。便潜血検査を行わずに、大腸内視鏡検査を行うこともあります。