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内科 板谷 赳史

 「酒は百薬の長(ちょう)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。中国の「漢書」に書かれていて、時代は紀元前にまで遡ります。適度に飲む酒はどんな良薬よりも効果があるという意味です。一方、「つれづれなるままに…」で有名な鎌倉時代の「徒然草」には、「百薬の長(ちょう)とはいへど、万(よろづ)の病(やまい)は酒よりこそ起(おこ)れ。」と書かれています。古来より酒は健康に良いのか、害するのか議論されてきました。また、近年までは医学論文でも「Jカーブ」と言って、少量の飲酒をすると死亡率が下がると報告されていました。しかし、平成30年に権威ある医学雑誌に掲載された論文では、心血管疾患による死亡について、飲酒量が増えるほどリスクが高まると報告され、「Jカーブ」神話が崩れつつあります。
 アルコール健康障害対策として、令和6年2月19日に厚生労働省から「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が発表されたと話題になりました。このガイドラインでは、アルコール健康障害対策推進基本計画を基に、生活習慣病のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上,女性20g以上)を飲酒している者の割合を減少させることを目標としています。純アルコール量は「摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8」で求めることができます。純アルコール量20gの具体例を挙げますと、5%のビールは500ml、15%の日本酒は167ml(1合弱)、26%の焼酎は96mlとなります。
 ただし、これは最低限ここまで減らしましょうという目安であり、ここまで飲んでよいという免罪符ではありません。疾患によっては飲酒すること自体がリスクになります。例えば、少量でも飲酒すると、男性では高血圧や胃癌、食道癌のリスクが、女性では高血圧、出血性脳卒中のリスクが高まります。興味を持っていただいた方は「厚生労働省 飲酒ガイドライン」で検索していただけると、ガイドラインに表が載っているので参考にしてください。
 自分が飲んだアルコール量を把握して、そろそろ控えようかなと思えるようになることが重要です。お酒に呑まれず、上手に付き合っていきましょう。