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皮膚科 橋本  任

 「ステロイドを塗ると皮膚が黒くなる」と相談される方がいます。しかし、ステロイドを塗ったから黒くなるわけではありません。日焼けで黒くなるように、皮膚の炎症が強い、あるいは炎症を繰り返すと、黒~褐色の色素沈着が残りやすくなります。むしろ、早期にステロイドを塗った方が、色が残る可能性が減る場合もあります。
 また、強さを気にする方もいます。ステロイド外用薬(塗り薬)は、強さで5段階に分けられます。通常の湿疹、かぶれ、アトピー性皮膚炎などでは、やや弱め~強めが使われます。蜂や虫刺され、ウルシかぶれ等で皮膚症状が強い時やアトピー性皮膚炎等でも症状が強い時で感染の併発が無い場合は、最強のステロイドを限られた期間使用する場合もあります。蜂や虫刺され、ウルシかぶれ等では、短期間ステロイドの内服まで行うこともあります。まぶたでは、目に影響しないよう、多くは弱めが使用されます。体の部位で薬の吸収には差が有り、使い分けがとても重要です。
 「ステロイドを長く塗ると体に蓄積して怖い」と思われる方もいます。元々、ステロイド(副腎皮質ホルモン)は人間の体で作られています。長期間、多量な全身投与となると、高血圧、糖尿病、骨が脆くなる(骨粗しょう症)などの副作用が問題です。ステロイド外用薬は内服薬(飲み薬)と違い、このような副作用は稀です。
 しかし、ステロイド外用薬でも、ニキビ等の細菌、水虫等のカビの増加など、皮膚の感染の増悪を招いたり、不必要に強めのステロイドを長く使い続けると、赤ら顔(酒さ様皮膚炎)やペラペラとした薄い皮膚(皮膚萎縮)になり、ぶつけた記憶も無い程の弱い刺激で内出血(ステロイド紫斑)が生じたり、皮膚がずるむけ、やけどのようなびらん(表皮剥離)が生じる場合もあります。特にご年配の方では、取り返しのつかない状態となってしまうこともあります。
 確かに強いステロイドの方が効果は高いです。しかし、デルモベート(クロベタゾールプロピオン酸エステル)等の強いステロイド外用薬を、不必要に、漫然と、何年も使用されてはいませんか?