北茨城市民病院 歯科口腔外科 長井 宏樹
病気の予防には原因の除去が必要です。虫歯についても同じことが言えます。
では虫歯の原因は何でしょうか?
ずばり虫歯菌(主にミュータンス菌)です。したがってミュータンス菌を口の中から除去できれば虫歯は予防できると思いませんか?
実際に口腔内にミュータンス菌を保菌していないと虫歯にならないことは証明されていますが、すでに口腔内に定着したミュータンス菌を完全に除去することは今の技術では不可能です。しかしミュータンス菌に感染しないようにすることはできます。そのカギは乳幼児期にあります。
ミュータンス菌の感染経路は人の口から口への伝搬です。赤ちゃんの口にはもともとミュータンス菌はいません。しかし赤ちゃんと食器類を共有したりすることでミュータンス菌が親の口から赤ちゃんの口に感染するのです。特に生後6か月~3歳くらいまでの感染リスクが高いとされています。そのためこの時期は赤ちゃんと食器類を共有しないことが重要です。この時期を過ぎると口の中の細菌叢(さいきんそう)が固まってくるため、他人由来のミュータンス菌が口の中に入ってきても定着する可能性はほとんどありません。
ただ菌が定着してしまっても落胆する必要はありません。正しい歯磨きを身に着ければ虫歯の予防はできます。さらに言えばミュータンス菌がいなくても歯磨きを怠れば歯周病にはかかります。いずれにせよ歯磨きは生きている限り必要ということです。
こう考えてくると究極の虫歯予防策はやはり正しい歯磨き習慣ということになりそうですね。