北茨城市民病院 循環器内科 山尾 秀二
脳梗塞は、ある日突然に片方の手足に力が入らなくなったり、呂律が回らなくなったりする病気です。脳の動脈が閉塞することによって発症し、脳や頸部の動脈硬化が原因のこともありますが、約三分の一は心房細動という不整脈が原因と言われています。
心房細動は加齢とともに増加し、七十歳代の五%、八十歳代の一〇%程度に見られる比較的起こりやすい不整脈です。動悸を自覚して気づくこともありますが、自覚症状なく健診等で偶然に見つかることも多くあります。心房細動の人は、脳梗塞発症の可能性が正常脈の人の約五倍に増えると言われています。
心房細動では、心臓の中で血液が淀んで血栓が生じ、その血栓が脳血管に流れて詰まり脳梗塞を発症するのです。したがって、心房細動による脳梗塞を予防するためには血栓を抑制する抗凝固薬が有効です。
健診で心房細動を指摘されても、「自分は症状もないから大丈夫」と、治療を受けていない人も多いようですが、それは大きな間違いです。巨人軍元監督の長嶋茂雄さんが脳梗塞を患ったのはご存知と思いますが、その原因が心房細動と言われています。それまで何の症状もなく元気にしていても、脳梗塞を発症すると何らかの後遺症が残ることも多く、生命にかかわることもあるのです。
心房細動を指摘されたら、自覚症状がなくても医療機関を受診して適切な治療を開始しましょう。